Kamasi Washingtonと ドラマ『Homeland』

Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)。

番組にお付き合い頂いて居た方は別として、ジャンルとしてはジャズなのでソウルファンには、ご存知でない方も居るかと思いますが、ソウルファンにも、というより、今を生きる全ての音楽ファンに是非ともお勧めしておきたいアーティストです。

www.kamasiwashington.com

Kamasi Washingtonは、Herbie Hancock、Wayne Shorter、Kenny Burrellら錚々たるJazz GiantsからChaka KhanにLauryn HillにSnoop Doggまでと新旧ジャンルを越えたビッグネームのバックを担って来たLAのサックス奏者。2015年の夏に、ベースはThunder CatとMiles Mosley、DrumはRonald BrunerとTony Austin、鍵盤には、Brandon Coleman、Cameron Gravesに加え、自身のバンド、Next Stepの面々達、更に、32名のオーケストラに20名のコーラスと、総勢60名以上が参加して制作され、なんと収録時間も3時間弱という3枚組の壮大な大作『Epic』で満を辞しての大々的デビューを飾りました。

彼を世に送り出したのは、Flying Lotus率いるBrainfeederで、Kamasiの盟友、Thundercatも擁して居ますが、2018年には”現代のNina Simone“とも称されるGeorgia Anne Muldrowを迎入れるなど、このレーベルこそは、現行West Coast Fusionともいうべきシーンの中核を担う重要拠点なので、気になる向きにはチェックをお勧めしつつ、ちなみに、私はThundercatとBrandon Coleman、それぞれのソロ作品も大〜好きだったりします。

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まさに、最高の環境を得てKamasiが放った2015年のこのデビュー作は、現行LAジャズ・シーン最大の話題作となり、以降、Kamasi Washingtonは“新世代ジャズ黄金期の象徴”という冠を戴くに至っているので、正真正銘、現行ジャズ界の巨人です。私が彼の音楽と出会ったのも、この、とてつもない大作でしたが、まさに“衝撃”でした。Kamasi Washingtonの音楽世界に、私は、ジャズのーというより、“良い音楽”の“明るい未来”を聴くことができたのです。アフリカンにカリビアン、ラテンにブラジリアンに、ソウルやファンク、ヒップホップなど、ありとあらゆる音楽の要素が極めて自然に息衝いていて、大らかでふくよか、しかもピュアなスピリットに満ち溢れた素晴らしい音世界。折しも、PC制作がどんどん当たり前になっていく中で音楽の行く末に希望を抱きづらくなってきていた頃で、そんな私にKamasiが大きな希望を与えてくれたのでした。

『Epic』ジャケ写

特に『Epic』の収録曲「The Rhytm Changes」は突出したお気に入りとなり、毎年、春には必ず聴く1曲=私にとっての春色Songの定番となっているのですが、そういえば〜と思い、ちょっと調べてみたら、この曲を番組の“Spring Soul特集”でOAしたのは2016年の3月17日のことで、つまりは5年前の丁度、今頃でした。そう、リズムといい、スピリットといい、とにかく春色の名曲なのです。この曲の醸す、とびきりポジティヴでピースなヴァイヴは、とにかく強力で、コロナ禍の今今に於いてさえ、やっぱり、しっかり効いてくれています。今年はリピート聴きまでしてしまい、かなりのヘビロテ状態かも。と、そんな訳で、春なのでKamasi Washington―という流れは、そもそも確かに有ったのですが、敢えて、今彼をこのHPでご紹介しているのには、ちょっとした訳があります。

この数年間というもの、夢中になって観続けてきたアメリカのシーズン物のTVドラマ『ホームランド』の、遂に!の最終シーズン8全編がNetflixで観られるようになり、案の定、ほぼ一気に観終えることとなったのですが、そのエンディングの舞台が、2019年のKamasi Washingtonのモスクワ公演!なのです。公演場所は、おそらくSt.Petersburgシアターと思われますが、ロシアの贅を尽くしたかのゴージャスなのシアターで、専らバレエやオペラで使われているようですが、そのホールとKamasi、そして、ドラマの結末―この3身一体の演出の妙に、甚く感じ入ってしまったのです。

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シーズン8

『ホームランド』は、米国の極めて有能な、但し、双極性障害を抱える女性諜報員、キャリーの波瀾万丈な人生を描いた極めてシリアスで硬派な社会派ドラマ。そもそもBGMの目立った使用は、このドラマに於いては極めて稀なことなので、此処で、このような形で音楽がフィーチャーされていること事態が驚きでしたが、次の瞬間にKamasiだ!ーと確信。いよいよ釘付けとなって観たエンディングのシーンは、実に、音楽と映像のみで顛末が伝えられているのですが、このドラマのエンディングで、Kamasi Washington@モスクワ公演を垣間見ることとなるとは全くの予想外にして、結果としては、極めて感動的な出来事でした。果たして、やっぱりKamasiの音楽の最大にして最強な魅力は、混沌とした世界に於ける“希望”なのだ!と、改めてつくづくと噛み締めました。

このドラマ『ホームランド』の全話を観続けた人で、尚且つ、Kamasiをリスペクトする人には、この感動を、必ずやシェアできるハズと思うのですが、なんと、全8シーズンで1シーズン12話から成る超大作。本国アメリカでの全シーズンの放映は、2011年11月〜2020年12月までと、このドラマの全編制覇という前提は、ちょっとハードル高いかな…? 思えば、シリーズ1を深夜のTVで観初めて、それから数年間はレンタルDVD店通いして、そして、この春、Netflixで最終シーズンを観て〜と、このドラマの制覇自体が、私には、かなり感慨深いです。

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