Hawaii 105 kine

Soulという音楽は決して大袈裟ではなく、私の人生そのものであり、生き様やスピリットという意味においては、私という人間そのもの−とさえ思うに至っていますが、それでも、心の故郷は?と問われれば、一切の迷いなくHawaii―と答えます。Hawaii同様に滞在したことがあるNYでもNJでもLAでも無くAMSでもなく、Hawaiiであり、それは初めて、かの島を訪れてから40年を経た今も変わることがありません。もちろんSoulに心酔してからというもの、メインランドのSoul City各地に想いを馳せ、シカゴやニューオーリンズ、メンフィスやフィラデルフィアといった未踏の街に強く惹かれてきたこともありますが、“心の故郷”と言えばHawaiiであり、コロナ禍が長期化する中では郷愁が募るばかり。今や様々な形で、かなりヴァーチャルな“イメージトリップ”が楽しめるようになってきてはいますが、私にとって最良の手段は、やっぱりFMラジオ。それこそ、昔は海外へ赴く度にFMラジオをカセットに録音して持ち帰り、帰国後にも現地に住む友人に録音テープを郵送して貰うなどして楽しんでいたものですが、なんと今や、ネットで、世界各国、各地のFM放送を楽しめるようになっている時代!幾つかの方法があるようですが、私が使用しているのは、“OO tunes”というアプリ。初回のみ約5ドル(約620円)が掛かりますが、それだけで、アメリカ各地の提携ラジオ局のOAが、ずっと無料で楽しめるのです。しかも、タイムラグも半日〜1日程しかありません。このアプリを通じての、とても嬉しい出会いが、Hawaii 105 kine でした。

 私が、このステーションを好んで聴いている時間帯は、朝から昼下がりにかけてなのですが、まず、基本的に音楽が主役のmore music less talkスタイルで、なんと言っても選曲が素晴らしい。Classic Hawaiianから、今、かの島で流行中のPopsまで、満遍なく実に自然な流れで次々と聴かせてくれるし、その選曲にしても“ゆったりとした時間の流れ”を感じさせてくれるもので、とても癒されます。また、新たな発見や改めての見解に至ることも多く、飽きることなく楽しめて居ます。例えば、まるでヨーデル?と思える曲が良く掛かっていて思わず顔が綻んでしまったりするのですが、そもそも古からのHawaiianの唱法にヨーデル的な唱法があったということに思い至ったり。まぁ、そもそも彼の島にはハワイアンだけでなく、JazzやSoul、AOR、Soft RockにReggaeなど、豊穣な音楽土壌が有り、改めて、そうした多彩な音楽性に感じ入ることしきりです。

そして、ことHawaiiに於けるSoulということで言えば、日本のソウルファンには余り知られて居ないかと思いますが、実は、Hawaiiにも70年代頃からSoul musicを体現するローカル・アーティスト達が相当数居て、知られざる名盤の宝庫なのです。約5年程前にホノルル在住のDJでRecord Diggerとして名を馳せるRoger Bongが始動した気鋭のレーベル、その名もAloha Got Soulは、その事実を知らしめてくれた好例で、このレーベル発足当時は世界中のリイシュー・シーンでホットな話題となりました。このレーベルからの発掘音源からは、まさに隠れ名盤の筆頭ともいうべきMike Lundyの80作『Rhythm Of Life』の収録曲「Love One Another」や、大半が世界初CD化、初リイシューとなる珠玉のHawaiian Soulのレア・チューンをコンパイルしたリイシュー・コンピ盤『Aloha Got Soul, AOR & Disco In Hawaii 1979~1985』に収録されたTender Leafというグループによる82年のセルフタイトル作からのナンバー「Countryside Beauty」などNHK FMの番組でもOAしましたが、これらは私の大のお気に入り。まるで、適度なモイスチャーを含んだ、爽やかで優しい、かの島の風のような趣があって、やはりHawaii産のSoulならではの魅力に溢れています。

Mike Lundy /『The Rhythm Of Life』
Aloha Got Soul/ 『Aloha Got Soul, AOR & Disco In Hawaii 1979~1985』

今や全米はもとより世界中、何処にでもSoulやR&B、Hiphopの体現者達が居て、そもそものソウルミュージックが放っていたローカル・レペゼン(local represent)の魅力は希薄となってしまいましたが、Soul@Hawaiiが、その点で際立っていることを確信させてくれるナンバーとの嬉しい出会いも。この数ヶ月に及んでkineでヘヴィーローテーションされているHawaiian Timeの「’O’OeHo’okahi」。この曲は、果たしてHawaiian Sweet Soulの名曲と評したい逸品で、特にそのコーラス・ワークなど、まさにスイートソウルの伝統を正しく踏襲しつつ、まるで凪の海原に身を委ねているかのような、たゆたうようなグルーヴ感を醸してくれていて、とにかく最高です。実はこの曲は、95年リリースのナンバーと判明。もはやHawaiian Soul Classicというべきかも知れませんが、それが2021年の今にヘビロテされているということも、今の日本では、まず望み得ないこと。刹那の流行物のみではなく、エヴァーグリーンな名曲達こそが主役!という、その在り様にRespect!